■目的
バッテリを購入する際(及び使用中)に指標となるパラメータを基軸に、それらとバッテリの性能の相関を抽出する
こと を目的とする。
今回は、まずあたり実験と位置づけ、影響の大きいパラメータの抽出とそれらが性能に及ぼす大きさについて
仮説を 構築する事を主眼においた。最終的にはバッテリ購入時やレース選別時の一助としたい。
※尚、私はバッテリの専門家でもなんでもありません。
■協力
バッテリの基礎知識やデータのとり方等においてniCさんカメ林さんはじめとするAORcメンバーに助言いただき
まし た。またフェラーリ伊藤氏の記事も参考にさせていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
■実験条件
1 サンプル
今回手持ちのバッテリの中から1700mAhと2000mAhのものをそれぞれ4本づつ選んだ。
左列が1700で右列が2000である。すべてサンヨーセルでパナソニックは無い。
選択にあたっては、少ないデータでなるべく多くの仮説を抽出すべくパラメータがある程度ばらけるように設定
した。
(従って、あるパラメータに固定したより精度の良い実験は次回以降の課題とする)
以下各バッテリの紹介をする。
左列奥より
1 オリオン1700SCR
1700としては標準的なSCRのパック。一応オリオンブランドだが安売り対象の一般的なやつである。
約18ヶ月経過しておりかなり酷使した。3500円程度で購入。
2 タミヤRC1700SP
タミヤブランドの最近の一番の売れ筋(らしい)。
このRC1700というのはパンチ力に評判のあった
1400SCR のバージョンアップ版(主に物理的容量アップ)だそうで、上記の1700SCRとは別進化のもの
らしい。
尚末尾のSPは「サンヨーパワー」を表すという説がある。3300円程度で約1年前に購入。
3 ヨコモ1700SCRC
1700SCRのパンチを改善したと言われるタイプ。最もパンチがあると言われる95年生産のZダマでなく、
96年生産の物である(ロットAD)。半年前に宇宙一で偶然発見し4000円くらいでゲットした。
一応大事に使っている。
4 オリオンRC1700マッチド
上記RC1700のマッチドタイプ。宇宙一のカウンターで店員に熱心に薦められ衝動購入した。6000円
くらい。 3ヶ月程度使用。マッチドとは各セルの放電特性が揃っていて高性能との事だが、何がどう揃っ
ているのか 私は知りません。内部抵抗?、放電時の電圧(or電流)の経時曲線???
右列奥より
5 ノーブランドRC2000
ラジコンを始めた(復活した)頃に購入した。約4000円。今回実験したものの中で最も酷使している。
接触不良が発生した為、パッケージは自分で交換した。
6 ヨコモRC2000
3ヶ月位前に4300円で練習用にと購入。最近よく使っている。
7 イーグルRC2000ザップド
リバティランドで衝動買い。定価6800円。ザップドと称する高電圧処理を施す事によって各セルあたり
0.2V 程度放電電圧がアップするそうな?
主にパンチを稼ぐ手法らしい。まだ殆ど新品である。
8 オリオンRC2000マッチド
2ヶ月位前に買った。今回実験した中では最も購入価格が高い約6500円。レースやここぞの時の為に
温存しているが、定価6800円以下というレギュレーションでは使えない。
という8個のサンプルにて実験を行った。尚購入価格や購入時期は記憶に頼っているのでおおよその目安で
ある。
2 バッテリの管理について
今回サンプルとして使ったバッテリはすべて、購入後から現在まで一定の機器で一定条件(下記参照)で
充放電を行っている。 すなわち、
・充電はヨコモYZ720Gを使用し4〜5Aで充電。
・基本的に使用は週一回以下
・RC使用後はヨコモEP mate072にて5A放電。
これらの条件がバッテリの寿命や性能に及ぼす影響が大きいと聞く。今回は、RC用としてある程度は気を
使って管理して使用したバッテリが前提という事になる。
(例えば放電管理を怠ったバッテリの性能、等についてはまた別の機会にて実験を行う事とする)
3 測定条件
上左:普段使っている充電器ヨコモYZ720G
上右:普段使っている放電器ヨコモEPmate072
下左:今回測定に使用した充電器TEKIN BC112A
下右:今回測定に使用した放電器京商デジタルパワーコンディショナー
★充電前放電
EP mate072にて5A放電。放電後1日放置
まず、充電前の放電条件を整える事が重要。
★充電(測定)
TEKIN BC112Aにて PF2(パワーフレックスモード)(P)で充電。
この際に充電データ測定(充電時間、充電容量、ピーク電圧)
★放電(測定)
充電後1時間放置(充電直後は容量にかなり変化があるらしい)後放電した。
京商デジタルパワーコンディショナーにて定電流(14A)放電。
カット電圧は5.4V(セルあたり0.9V)。
この放電モードは、一応実走行(6分レース)を想定してのものです。すなわち連続して大電流を放電し、
ある程度(レースに耐えうる)のパンチ力を残した範囲でどれくらい実放電できるか?というものです。
もちろん実際の走行条件とは異なりますが、バッテリ間の相対比較には使えると思います。
この放電電流設定値によっては結果がかなり違ってくるので注意が必要です。バッテリが劣化してくると
小電流ではそこそこ放電できるものの大電流ではすぐにタレてしまう、という経験がよくあるかと思われます。
参考
(春野さん) :同じバッテリーでも放電電流が15Aと3Aでは容量がかなり違います。手持ちの1700SPで一番いいヤツは1650
mAh(15A)・1730mAh(3A)、1400NPは何と15A放電で公称値の半分になりました(管理の悪いバッテリーで、なおかつパナの
セルですが・・・)
(niCさん) :タミヤ1700SPだと、いいので1796mAh・462sec・7.07Vでした。同条件でも充電から30分ほど時間をおいたものはぐっ
と数値が落ちて1683mAh・433sec・6.66Vという具合です。上げたてホヤホヤのものの数値は極端に良いようです。
バッテリの測定にはこれら測定条件を揃える事が非常に重要であると思われます。充電する前の放電条件に
よって 次に充電する容量に差がでるでしょうし、放電する電流によってもかなり差がでるでしょう。
デジタルパワーコンディショナーは内蔵の9V電池の状態によって測定値が振れるとの情報もあり、測定条件は
シビアに監視したほうが良さそうです。
今回、測定は誤差を見る為にすべて2回ずつ行い、その平均値をとりました。
2回の測定で各データ間に5%以上の誤差があった場合は、測定をやりなおしする予定でしたが、2回の測定で
5%以上差があったものはありませんでした。
■実験結果
以下に実験結果を示す。
<図1>
★データ説明
購入価格:アバウトです。うろ覚えなもんで。。 定価ではなく実購入価格です。
経過月:購入してからおおよそどれくらいの月数がたっているか、です。製造時からではありません。
本来は使用回数をとりたい所ですが、カウントしてない為、おおむね均等に使用しているものとして
今回は経過月で代用しました。 大体月に2〜3回使用しています。
充電時間:上記モードで満充電までに要した時間(分)です。
充電容量:上記モードでどれくらいの充電容量がなされたかを示します。多いほど沢山容量が入った事になります。
ピーク電圧:満充電を検知するピーク電圧です。この電圧が高いとバッテリが劣化してきたという事だそうな。
放電時間:上記モードで放電した時の放電時間です。レースを想定した実走行時間ということになります。
実際にコースで走行してデータを対比させれば、測定データからのある程度の予測もできるでしょう。
放電容量:上記モードで実際に放電された容量です。充電した容量とは必ずしも一致しません。
実際の走行で使える容量と捉えて良いでしょう。
放電平均電圧:放電は定電流(誤差は不明)で行っているので、その際の放電電圧の平均値になります。
実際には放電開始時から終了時までの経時変化があるのですが、一応「パンチ力」をある程度
表しているものと考えられます。
以下これらのデータを元に分析を行った。
尚、今回のサンプル数は8と少なく各パラメータの傾向をそれぞれ分離して捉え切れていない。
従って、各分析結果はあくまでも仮説と捉えていただきたい。さらにバッテリブランドの実力に直結するには危険で
ある事を最初にお断りしておく。
1 充電容量と放電容量の関係について
<図2>
図2の横軸はバッテリの経過月数、縦軸は放電容量と充電容量の比をとった。プロット赤色は1700を、青色は
2000 のバッテリをそれぞれ示している。
このグラフは、充電時の容量と実際にレースを想定した放電容量の間に相関はあるか?を表している。
このグラフを見る限りは関連は薄い(もしくは別要因が支配的)と言える。
すなわち、充電時に沢山容量が入ったからといって、必ずしも実際にそれらが有効に使えるとは限らないという事だ。
例えば、同じ充電容量が入った2つのバッテリでも、放電/充電容量比が大きいものは、少ないものに比べ、
タレずに走れる走行時間が長い、という事になる。
また1700と2000、経過月数でも際立った相関がみられない。
従って、
◆実使用を想定したバッテリ容量は放電時で測定すること。充電時の容量はあまりアテにならない。
という仮説が成り立つ。
izu@さんのご意見:充電容量と放電容量の差は内部抵抗差により熱として逃げた差ではないか
2 経過月数と充電ピーク電圧の関係について
<図3>
図3は横軸にバッテリの購入したからの月数、縦軸に充電ピーク電圧をとったグラフである。
このグラフは、古いバッテリは充電ピーク電圧が上がるかを見ることができる。
わずかに右肩上がりの傾向が見て取れるがそれほど顕著では無い。
10Vに達するとかなり劣化したバッテリといわれているが、今回測定した中ではそのようなものは無かった。
これから言える仮説は
◆18ヶ月程度の使用において、一定の充放電条件を守れば劇的にはバッテリは性能劣化しない
ということである。
逆に言えば、1年程度で使い物にならなくなったら、不良品か、管理が悪いか、よほど酷使しているか、という事だ。
3 経過月数と放電容量について
<図4>
この図はバッテリの経過月数と放電容量の公称値比をとったグラフである。
本来は放電容量の購入時値をリファレンスとして用いるべきだが、データが無い為、公称容量(1700or2000)と
今回の 実放電値の比をとった。
このグラフは、月数がたつと容量が減ってくるか?を表している。
ところが、このグラフを見る限り、どちらかと言うと右肩上がり的傾向が読み取れ、古いバッテリのほうが容量が多く
入る、とも見えてしまう。(もしくは他の要因(初期性能差や個体差)が支配的)
ここから言える仮説は、
◆18ヶ月程度の使用において、一定の充放電条件を守れば劇的には放電容量は減らない
◆新しいからと言って沢山容量が入るとは限らない
ということである。
逆に言えば、著しく放電容量が減少した場合は、走行後の放電を怠った等の管理不良による所が大きいと考えられる。
尚、放電容量(放電時間)データは本戦用バッテリ(特に耐久レース)の選別に使えそうだ。
4 経過月数と放電電圧について
<図5>
図5は経過月数と放電時の平均電圧を示したグラフである。
すなわち、古いバッテリはパンチが無くなるか?を表している。
これは明らかに右下がりの傾向(特に1700系は顕著)が見られバッテリの経時劣化とパンチに相関があると言える。
この測定結果は、レース時のバッテリの選別(特に予選用)に使えそうだ。
これらより
◆古いバッテリはパンチが無くなってくる傾向にある
という仮説が言える。
5 購入価格と放電容量について
<図6>
図6はバッテリの購入価格を横軸に、実放電容量を縦軸にとった散布図である。
このグラフは、高いバッテリは容量がでかい傾向にあるのか? を表している。
結果は、見ての通り逆の傾向になっており、1700/2000それぞれでマッチドバッテリが低い容量(走行時間)
となっているのが面白い。 これは、バッテリが持つエネルギをパンチが出る方向に最適化している為か?
マッチドバッテリは
1 各セルの容量が一致 2 高い放電電圧のセルを選択
3経時放電特性の似たもの
と思われます。高いマッチドは上記すべての条件が高いレベルで揃っていると思われますが、安いマッチドは
例えば、2を重視して、1は揃ってはいるが容量が高いとは限らない、、等々の割り切りがあるとの仮説をたて
ました。
これらから言える仮説は
◆値段と放電容量は必ずしも比例しない。
という事である。
ますもとさんご意見:放電電圧の結果と反比例的に見えるのが気になる。放電器の測定特性上そのような傾向になっている
可能性は無いか? →定電流を維持する為に抵抗値変化させている? これについては別途調査予定。
フェラーリ伊藤さんご意見:数千円で入手できるマッチドバッテリはマッチトとしては下のランクに位置する。すなわちもっと
高価なマッチドは放電容量も優れたものが選ばれているハズである。
6 購入価格と平均放電電圧について
<図7>
図7はバッテリ購入価格と放電時の平均電圧を示したグラフである。
これは、高いバッテリはパンチがあるか?を表している。
グラフを見ると、5000円以下のバッテリはモノによってばらつきがあり一概に言えない事、また6000円以上の
マッチドバッテリは明らかにパンチが出ている事がわかる。
パンチがあるのは、オリオンのマッチド(1700、2000)とヨコモの1700SCRCである。
やはり定評はホンモノというところか。 タミヤのRC1700SPも一番安かった割には健闘している。
(タミヤブランドは品質にばらつきが少ないという話も有り)
意外なのが、イーグルのザップドである。2000のマッチド以外では一番高い放電電圧であるが、マッチドには
及ばない。
以上より下記の仮説が言える
◆マッチドバッテリは放電電圧特性(パンチ)に最適化しているようだ
◆安いバッテリ(5000円以下)は当たりハズレが大きく、レースで使うには選別が必要だ
◆安い中では1700SCRCがパンチがありそうだ。でももう売ってない。。。
ここで言うマッチドは数千円で入手可能なパックタイプの事
であり、それ以上の高ランクのものは対象外
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以上から導き出された仮説を元に今回の一次結論を以下に示す。
■結論
1 一定の管理を行えばバッテリは少なくとも18ヶ月は実用的に使用可能である。
2 バッテリの性能測定は測定条件を一致させシビアに管理する必要がある。
3 放電時の放電容量と平均放電電圧でバッテリの性能をある程度把握管理する事
が可能だ。
4 マッチドバッテリはパンチがある。レギュレーションと財布の許す範囲で良い物を購入
したい。
5 安いバッテリは性能を測定して選別したほうが良い。
すなわちパンチのある予選向き、放電容量の大きい本戦(耐久)向き、そして練習用。
6 選別したバッテリはそれぞれの目的に応じて使用/管理したほうが良い。
7 1700SCRCは安いバッテリの中ではパンチがあるようだ。
もっと買っとけば良かった。
以上!
尚これらの結論、仮説を裏付ける実験をさらにおこなう予定である(予定は未定)